遠矢 将
2020.04.07

遠矢 将

大切に使い続けてもらう建築

遠矢 将

宮崎県

2016年3月修了

鹿児島大学の皆様、こんにちは。
私は、東京のNAP建築設計事務所という建築設計を専門とする会社に勤めています。ここでは、代表である建築家の中村拓志氏と共にさまざまプロジェクトに取り組んでいます。事務所の特徴として、“ふるまい”をキーワードに、人の動きや感じ方を意識した細やかな設計が行われていることが上げられます。それは、建物の寸法や、光りの入りかた、素材をどうするかなど、あらゆる要素を追求することで実現しています。私が進路として、この場所を選択したのは、“ふるまい”の設計手法を学ぶことが、“大切に使い続けてもらう建築”を設計するために必要であると考えたからです。
学部生の頃は、誰も見たことのない建物をつくりたいと考えていました。そのため、特に設計演習の授業に力を入れて取り組み、自分のアイディアが人から興味や関心を示してもらえるととても嬉しかったことを憶えています。
学部4年から大学院では当時新設された鯵坂研究室に入りました。研究室では、主なテーマとして近現代の建物・建築家に着目したものが多く扱われています。研究以外に、プロジェクトやワークショップ、建物の調査活動なども参加しました。特に、建築家 坂倉準三の展覧会活動や、東京駅百周年記念展覧会での模型製作など、大規模なプロジェクトに参加し、貴重な経験を積むことができました。こういった研究や活動を通して、既存の建物とその背景にある歴史や文化について、何度も考える機会を得ました。
現在の日本では老朽化した建物が使われ続けることは少なく、頻繁に建て替えが行われています。しかし、建物はただ機能的役割を果たすためそこにあるのではなく、地域の風景としてそこで過ごす人々の思い出の一部であり、同時に歴史をかたどる文化的価値を持った存在です。私は学生生活を通して、“使われ続ける建築の意義”を学び、ただ新しいものをつくりたいという考えから“大切に使い続けてもらう建築”をつくりたいという思いを抱きました。そして、卒業後、今の事務所へ入社することを決めました。
設計には答えはありません。答えない仕事を進めるには自分で決断する瞬間があり、そのために思想や信念が必要となります。私は鹿児島大学での生活を通して、その礎となる経験を積むことができたのだと思います。
在学中の皆様も学生生活の中で、自分の信じる道はなにか、夢は、目標はなにか、一度考えてみて下さい。